1980年代終わり頃からVOWの編集担当、初代総本部長の渡辺祐さんが退いたあとの単行本『VOW4』(1992年)では総本部長的な役割もつとめ、ワタクシ、古矢が二代目総本部長になったあとも陰になり日向になり、夕方になると無精髭で顔の下半分を青々と染めながらVOWを盛り上げてくれた、宝島社のブクロのだんな(©︎みうらじゅんさん)こと西袋豊さんが亡くなりました。
イラストは『VOW6』に掲載された、ブクロのだんなの凛々しい姿。
たぶん朝方か午後早めのお顔だと思います。二代目総本部長の古矢が巨悪のように描かれていますが、これはブクロのだんなの立案によるものだったと記憶しています。
おそらく当時の読者は「二代目総本部長のフルヤってのは、自分をこんなエラそうに描かせて、どんな神経してるんだよ!」と思ったに違いありません。
みうらじゅんさんがつけたあだ名の通り、いいとこの若旦那のようなおだやかな物腰でありながら、やることは大胆、必要とあれば名もなきライターを巨悪に仕立て上げることにも躊躇しない、西袋さんはそんな編集者だったように思います。
二代目総本部長になったばかりの『VOW5』。編集後記締め切りの翌日、いつ編集担当ブクロのだんなから電話があるかと震えつつその原稿をワープロで打っていると、昼過ぎにとうとう連絡が。
「なにしてんの」
怒るでもなく、せかすでもなく、ドスだけが効いた、そのひと言。
思わず失禁したオレは、書いていた原稿を読み直しもせず、すぐさま宝島編集部にファックスしたのは言うまでもありません。そのせいなのかどうなのか、先ごろ亡くなったアリスの谷村新司さんに申し訳ないというか、自分が恥ずかしいだけというか、『VOW5』の編集後記にはそんな間違いも載っています。
『VOW7』掲載の読者投稿には、夕方から夜にかけてと思われる、湯村輝彦画伯によるブクロのだんなの顔が。投稿人によると「某進研ゼミの付録の表紙」とのことです。
ス◯ホも持っていないアナログ系のオレ。1990年代半ばにはすでにデジタル系へと華麗にシフトした(と思われる)西袋さん。いつしか一緒に本を作る機会もなくなってしまいましたが、最近は闘病しつつ仕事をされていたそうです。
61歳。素晴らしい編集者人生に拍手、感謝、合掌。